絵本のある暮らし、こどものいる暮らし

自宅で、図書館で、本屋で、出会った気になる絵本をてきとうに紹介していきます。

【大人向け】 『ぜーんぶわすれた』 ベップヒロミ

自宅のネットがダウンして、ずいぶんご無沙汰してしまいました。

気になる絵本がたまって忘れてしまいそうです。

 

さて5冊目、今回は大人向けです。

『ぜーんぶわすれた』 ベップヒロミ

 

 

出会いは店頭。表紙がさわやかだったので軽い気持ちで立ち読みました。

しかし、その中にはあまりに現実的な内容が、忠実に描かれていました。

私、動揺。

いったん本棚に返すも、その後もどうも頭の片隅で気になってしまい、けっきょく今、手元にあります。

  

テーマは、認知症です。

重たいですね。

 

作者の認知症の身内の様子が、クロッキー調の絵でリアルに描かれています。

といっても、毎日「はじめまして」ごっこをしてみたり、明らかに簡単すぎるクイズごっこをして「そこまで忘れてないよ〜」と笑わせてみたりと、重苦しさはあまり感じさせません。ユーモアを交えて描かれています。

そして、絵本の最後のほうには、「忘れていく」ということについて、

(もちろん、周囲にとっては悲しく、しんどいことの方が多いことなのだけれど、)

「それもまた自然なことなのかもしれないな」と思わせてくれるあたたかい解釈が描かれています。

 

作者はあくまで直接介護をしているわけではないそうで、だから、このような視点で描けたのかもしれません。

 

ちなみにこの本、Amazonのレビューには「(内容がきれいすぎるからか)介護の経験のない小中学生になら、勉強になる本」とあります。

 

でも私には 、介護している当事者の気持ちを少し軽くしてくれる、ステキな絵本なのではないかなと思えました。

きっと、最中の人には「笑い」や「希望」はあまり考えが及ばないものだから。

 

最近は私の身近にはそのような人はいないので、想像の域を出ませんが。

家族で認知症患者の介護をする、ということは、体力的なつらさはもちろん、気持ちの面でも、元々しっかりしていた本人を知っている分、苦しいものだと耳にしたことがあります。

 

だからこそ。

 

この本、元々は作者のお母さん(=介護している人)に向けての個人的プレゼントだったそうで、おそらく、あまり出版後も部数は出回っていないと思われますが・・・

もっと多くの人の手に届いてほしいなと感じさせる一冊なのでした。

 

 

ぜーんぶわすれた

ぜーんぶわすれた